北里大学北里生命科学研究所・大学院感染制御科学府
生物有機化学研究室
Kitasato University
Kitasato Institute for Life Sciences & Graduate School of Infection Control Sciences
Laboratory of Bioorganic Chemistry

The Sunazuka Group Japanese/English

当研究室の研究方針

当研究室では、北里研究所や北里生命科学研究所のグループによって見出された魅力溢れる天然有機化合物をもとに、実学研究としての創薬研究を大きな指針としています。主な標的疾患は感染症(ウイルス・結核マラリアMRSA寄生虫真菌など)やアレルギーなどの重要疾患(アレルギーガン喘息インフルエンザ重症化統合失調症糖尿病など)です。そこで、我々はこれらの疾患が21世紀における人類が克服すべき大きな課題であると位置づけ、我々の研究がその一助となることを目標に日々研究を行っています。
これらの研究を行うツールとして私たちは有機合成化学を巧みに利用し、特に以下の3点を基盤として研究を行っています。

  • 望みの天然物を合成する「全合成研究
  • 天然物から直接誘導化し、天然物より生物活性を向上させた化合物を作る「誘導体合成
  • 酵素中の特異的な反応を利用した「in situ クリックケミストリー

他大学との共同研究

 徳島大学との共同研究をスタートさせ、ガン喘息インフルエンザ重症化統合失調症糖尿病などの治療薬のリード化合物を微生物代謝産物から見出す研究にも取り組んでいます。

具体的な研究プロジェクトの一例

北里大学共同研究プロジェクト

新規抗真菌•抗昆虫•抗アレルギー薬開発を指向したキチナーゼ阻害剤の創製研究

 当研究室では、北里大学理学部•薬学部•北里生命科学研究所による共同研究プロジェクトに参加し、キチナーゼ阻害剤の創製研究を展開している。以下はその研究項目一覧。

研究項目

① 強力なキチナーゼ阻害剤の創製研究
  担当;砂塚•廣瀬(北里生命科学研究所)
キチナーゼ阻害剤の論理的分子設計研究
  担当;合田•広野(薬学部)
③ 酵素阻害活性評価/抗昆虫•抗真菌活性評価研究
  担当;塩見•森(北里生命科学研究所)
④ 様々なキチナーゼの精製•酵素阻害活性評価
  担当;山本(元基礎研究所)
キチナーゼ阻害剤による抗アレルギー作用の解析と評価研究
  担当;井上•服部(理学部)

詳細についはこちら(PDFとしてダウンロードされます) LinkIconDownload 研究詳細 [PDF 1.9MB]

全合成研究

ペプチド系天然物の固相全合成研究

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 北里研究所の大村らによって見出されたペプチド系生物活性天然物の固相全合成研究を展開している。
キチナーゼ阻害剤アージフィン:キチナーゼは、昆虫等の無脊椎動物や真菌などに広く存在する酵素であり、それらの生命維持に重要な役割を担っている。従ってキチナーゼ阻害剤は、殺虫剤や抗真菌剤としての利用が期待できる。また近年、ヒト酸性キチナーゼを阻害することによって喘息時の炎症を抑制できることから、喘息治療薬の標的としても注目されている。そのリード化合物として期待できる天然物アージフィンはバクテリアの一種であるセラチアのキチナーゼとX線共結晶解析が行われその詳細な結合様式が明らかとなっている。本化合物を標的とし誘導体合成へ展開できる固相全合成の確立を検討しするとともに、X線情報からコンピュータ解析を行い強力な阻害剤のデザイン、合成を検討している。その他、種々のペプチド系生物活性天然物について研究を展開している。

誘導体合成研究

マクロライド抗生物質の創薬研究

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 16員環マクロライドのタイロシン(TYL)の誘導体は、グラム陽性菌及びマイコプラズマ感染症に広く使用される家畜用の抗生物質である。しかしながら、それらは長い間使用され続けてきた結果、薬剤低感受性菌の出現という問題を招いている。そのため、これを克服する強い抗菌活性を持ちかつ安全な抗生剤の開発が求められている。
このような背景のもと、TYLをリードとした抗薬剤低感受性菌活性を有する新規誘導体のデザインと合成に着手している。この誘導化においてクリックケミストリーを利用することで迅速に新規TYLライブラリーを構築し、新たなリード化合物の探索を検討している。
その他、種々のマクロライド抗生物質の新作用解明と合成研究も展開している。

In situ クリックケミストリー

新規生物活性化合物の創製研究

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 近年、薬理活性を発現するターゲットタンパク質と親和性を有するビルディングブロックを、ターゲットタンパク質自体のリガンド結合部位を反応場として用いてアジドとアセチレンをトリアゾール化させ、より親和性の高い化合物を得るという”in situ クリックケミストリー”が高活性な誘導体を迅速に探索できることから注目されている。
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 新規キチナーゼ阻害剤創製:キチナーゼ阻害剤アージフィンの活性発現に重要な官能基を含む一部の構造を抽出し、さらに意図的にアジド基を導入したキチナーゼ阻害剤をin situ クリックケミストリーのリード化合物として用いた。種々のアセチレンライブラリーと酵素であるキチナーゼを用いて標的部位に最適な分子構造を誘導する化合物へとトリアゾール化が進行するものをスクリーニングすることで高活性を示す化合物の探索を行っている。
その他、抗感染症薬の開発を目的に種々の天然物を利用したin situクリックケミストリーを展開している。